道を歩いていると、落ちている物が皆、携帯電話に見えてきた。見つかって拾っている情景を何度も想像した。見つからなかったらどうしようか・・明日の朝早く、明るくなったらもう一度探しに来よう・拾われて悪用されたらたまらない。明日、解約に行こう・・
バラの実 バレリーナ
そもそも、携帯電話を持つようになってから不便になった。会社から帰る時、家内に何時に帰ると毎日メールをしなくてはならない。前のメールに帰宅時間を上書きするだけだが、帰ってくる返事もそっけない。しかし、メールしないと怒られる。電池切れの時は許されるが、そう毎日電池切れにしておく訳にもいかない。電話もめったに使わない。休日は、出かける時は家に置いておく。持っていると拘束されているようで落ち着かない・・ホームセンターに行く時は持って行って、洗濯物コーナーから電話する。「洗濯バサミがそんなに付いたやつ無いよ・・これじゃ駄目?」
ケータイというカタカナ表記も気に入らない。携帯もしてないのにケータイとは何事か・・そんなケータイを握りしめる時もある。大抵、病院からの連絡を待っている時で、心中は穏やかではない。あまりいい電話の事は少ない・・ホトトギス
駐輪場まで着いたが、携帯電話は無かった。電車の中に置き忘れたのか?いや、電車の中では鞄を抱えていたから大丈夫・・やはり、自転車に乗ってからだ。アスファルトに落ちたなら音がして気づくはず、途中の草むらだ。元、体育館の跡地は今は公園になって、駐輪場はその一角にある。その途中には草むらがある。行きにも探した場所だが、帰りは草むらをくまなく探した。懐中電灯は、会社で貰った手回し発電式だ。左手で持ち、右手でハンドルをくるくる回す。公園には何人か人がいた。手を回しながら暗い草むらを歩き回る光景、なんか怪しい。草むらに四角い物。有った!拾い上げると、箱根で買った寄木細工のストラップとオーストラリアで買った皮のカンガルーが揺れていた。滅多に電話はかけないが、その場で電話した。「有ったよ〜」「有ったの〜?良かったね〜」電話の向こうは弾んでいた。
今日は海外出張の代休で、一日休み。穏やかで解放されている。幸い電話も無い・・
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