皆さんは、幽体離脱を信じるだろうか?体と魂が分離するというあれだ・・ 私は実際に幽体離脱を経験した事がある。
10年位前の夏だった・・その夏、持病の喘息が悪化して入院した。一週間近く点滴を受けて一応退院をした。しかし、退院後の方が酷かった。退院した日、部屋の中に入ろうとしたら、全身がピリピリと痛痒くなった。辛いので暫くは庭にいた。無理に部屋に入ったら、徐々に赤い斑点が出てきた。部屋の中でもピリピリが酷くなる場所と、そうでも無い場所が有るようだった。ベランダと風呂場は症状が軽い事がわかった。その夜は、風呂場で寝る事にした。湯船の上に蓋を敷き、その上で体を横たえて寝た。
その夜、自分の"命"の数が数えられる事を知った・・通常健康な時は、"命"の数は数万から数十万ある。その夜は、自分の"命"の数は百を割っていた。夜明けが近づくにつれ、90、80と減ってきた・・体は全身真っ赤になっていた。土曜日で病院が休みだったので、行きつけの治療院に行く事にした。家内に車で連れて行って貰うようお願いしたが、朝早いから治療院が開くまで待つように言われた。
私は待てなかった。決死の覚悟で一人で行く事にした。普段なら治療院までは自転車で20分もかからないが、その日はたどり着ける自信は無かった。「私が倒れていたら、この治療院まで連れて行って下さい」と書いたメモを持ち、自転車に乗った。トラックが通る度、「ブオー」という音がもの凄く大きく全身に響き、自転車がよろけた。
治療院はまだ閉まっていた。入り口の前で待つ事にしたが、そのうちに座り込んで眠ってしまったようだ。
やがて、治療院の人に見つけられたが、まだ早いので待合室で待っていて下さいと、中に通された。私は待合室のソファーに座って一人で待っていた。眼を閉じると、またあの"命"が見えた。その数は20も無かった。"命"が10を割った頃、自分の呼吸が止まったのが判った。次の瞬間、激しく息を吸った。・・と同時に自分が体から少し離れた感じがしたが、すぐに戻った。また、呼吸は止まった。次に激しく息を吸った瞬間だった。自分は、体から完全に離れて、天井近くで浮いていた。下を見ると、ソファーに腰掛けている自分の姿がはっきりと見えた。
あれ、今、自分は死んだのだろうか?と思った。空を飛んで、街の景色を見たい、という誘惑にもかられた。このまま外に飛んでいってしまったら、死が「確定」する事も漠然と判っていた。「絶対死んではいけない。今、死ぬ訳にはいかない。」と強く思った。深呼吸をして、息を整える事にした。・・・次の瞬間、私はソファーに座っていた。